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海の絶滅危惧種ジュゴン能
沖縄平家物語2024

ご予約開始いたしました。
どうぞよろしくお願いします。

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●作品について

 この作品の中心となるのは、ジュゴンです。ジュゴンは沖縄のやんばるを最北端として生息していました。

ジュゴンのいなくなったウチナーの海を眺めている漁師は、沖縄の18世紀に完成された演劇「組踊(くみおどり)」のスタイルで語ります。

その漁師を励ますのは、壇ノ浦の戦いで海の底に沈んだ平家武士たちの魂が姿を変えてよみがえった平家カニです。平家カニたちは能のスタイルで語ります。

 ジュゴンは今でも漁師のことを忘れずに南の島に移り生息していると言われ、漁師と平家カニはマウイの歌と踊り「ハカ」で南の島に向かいます。

 第二幕の海に沈んだ安徳天皇は、能のスタイルで語ります。安徳天皇とお友達になったジュゴンくんは、護岸工事で目が見えなくなり、耳が聞こえなくなり、南の島で静養しているとジュゴンくんの母が安徳くんに伝えに来ます。長年ウチナーに生息していたジュゴンの母は組踊のスタイルで語ります。

ジュゴンくんの生息するハワイ島に想いを寄せて、ウチナーの海にいる安徳くん、ジュゴンの母、平家カニは共にハワイの「フラ」を歌い踊ります。

■原作・脚本・主演:桜井真樹子

壇ノ浦の闘いに破れた平家の落人たちが、潮の流れに乗って、琉球の島にたどり着いたという伝説がいくつか残されています。物語は、壇ノ浦に沈んだ平家の武者たちと入水自殺をした安徳天皇とザン(ジュゴン)の出会いと別れが展開されます。​

■演目

I  「沖縄平家物語」前幕

II   幕間・講演動画「人魚の歌声?」音を使ったジュゴンの生態研究」

III「沖縄平家物語」後幕

■キャスト /スタッフ

シテ「漁師(前幕)・ジュゴンの母(後幕)」:桜井真樹子

ワキ「知盛カニ(前幕)・安徳天皇(後幕)」:吉松章

ワキツレ「教経カニ(前幕)」:佐藤拓

ワキツレ「家長カニ(前幕)」:コバヤシタカヒデ

ウクレレ:倉知誠

アイ狂言(幕間)の講演動画:市川光太郎(京都大学フィールド科学教育研究センター)

組踊・振付指導:金城真次

組踊・歌指導:新垣俊道

制作・運営:マリプラ

■沖縄平家物語2024 公演概要

●日時:7月15日(月・祝)海の日 16:00開場16:30開演

●会場:湘南江ノ島 虎丸座

●場所:神奈川県藤沢市鵠沼海岸1丁目12-17 江の島ビュータワー7F

●アクセス:小田急江ノ島線「片瀬江ノ島駅」徒歩2分

●料金:前売り3.500円、当日4,000円、小学生以下無料(席はメールで要事前予約)、学割1,000円(当日も同額です)

●お問合せ:まきこの会事務局(makikoclub2022@gmail.com / 090-9236-0836)

●ご予約:まきこの会チケットサイト https://x.gd/M7HZD

■作品解説

これから公演をご覧になる方の予習として、すでにご覧になった方にはあのシーンはそうだったのか!
がよくわかるかと思います!
昨年書いたnoteの記事です。ぜひお読みください。

今年も7月17日海の日、ジュゴン能「沖縄平家物語」を上演いたします!(1/3)

https://note.com/sakuraimaklko/n/n3103e6e2a228
今年も7月17日海の日、ジュゴン能「沖縄平家物語」を上演いたします!(2/3)
https://note.com/sakuraimaklko/n/nb23e7422a86c
今年も7月17日海の日、ジュゴン能「沖縄平家物語」を上演いたします!(3/3)
https://note.com/sakuraimaklko/n/n83ccb45bad27

 

●あらす

〈前幕〉

壇ノ浦で海底に沈んだ平家の武者たちが、平家カニとなって生まれ変わり、沖縄やんばるの海岸で漁師に出会う。仲間たちは漁師を止め、陸の工事の人足となってゆき、海の友ジュゴンも自分の前に現れなくなり、寂しく海を眺めている漁師に、平家カニたちはジュゴンの居場所を知らせる。ジュゴンは、「やんばるの護岸工事が始まって、南の海に逃げてしまったが、漁師のことを忘れたことはない」と平家のカニに伝言を頼んだ。平家カニたちは、漁師にジュゴンに会いに行こうと言い漁師は舟を漕ぎ出す。

〈後幕〉

8歳の安徳天皇は壇ノ浦で入水する。安徳は沖縄の海の龍宮の王に拾われて、1,000年が経った。安徳にもジュゴンの友達ができたが、今年はジュゴンくんが龍宮に遊びに来ない。するとジュゴンの母が安徳を訪れ「息子はやんばるの護岸工事の砂で目を潰され、耳が聞こえなくなりました。今、南の海で療養しています。安徳くんにこの歌を届けてほしいと頼まれて、あなたに会いに来ました」と。安徳は悲しむが、虹の向こうのジュゴンくんのいる海を見つめ、いつかまた遊ぶ日がくることを待ち望む。

●台本

〈前幕〉

漁師:

我んや 大浦浜から舟出じゃち  魚獲ゆる者どぅやゆる

ワンヤ ウフラバマカラフニンジャチ  イユトゥユルムンドゥヤユル

(私は、大浦の浜より舟を出し、魚を獲る漁師です。)

 

波間に映る 魚ぬ群り  網打ちゃい日々ぬ 暮らししち居しが

ナミマニウチル イユヌムリ  アミウチャイフィビヌ クラシシチヲゥシガ

(波間に映る魚の群れに網を投げ変わらぬ日々を送っていますが、)

 

ウルぬ丘居てぃ ザンヌイユ見りば  誠今日や ゆかる日どぅやゆる

ウルヌウカヲゥティ ザンヌイユミリバ  マクトゥチュウヤ ユカルフィドゥヤユル

(チビリシ(青珊瑚)の丘に、ジュゴンに巡り会えば、今日を吉日と喜びました。)

 

日々ぬうら辛しゃ 肝にかからわん  飛ぶるサシ鳥に 心浮かさりてぃ

フィビヌウラチラシャ チムニカカラワン  トゥブルサシドゥイニ ククルウカサリティ

(辛い日々もありますが、碧水に風を切るサシ鳥の勇ましい姿に、)

 

またん肝立てぃてぃ 天ゆ拝でぃ

マタンチムタティティ ティンユヲゥガディ

(もう一度、蒼い空に顔を上げました。)

 

やしが此ぬ岬  戦場ぬ足場 なゆんてぃさ

ヤシガクヌミサチ  イクサバヌアシバ ナユンティサ

(しかし、この岬に戦場の足場を作ることになりました。)

 

杭打ちぬ後や 石ゆ沈みやい  壁作てぃ砂ゆ 流さりらとぅ思ば

クイウチヌアトゥヤ イシユシジミヤイ  カビチュクティシナユ ナガサリラトゥミバ

(杭を打ち、石を沈め、壁を作り、砂を流し込もうとしています。)

 

役々ぬ仰し事なかい  海人や 海ぬ業しるな

ヤクヤクヌウィーシグトゥナカイ  ウミンチュヤ ウミヌワザシルナ

足場作ゆる 手ゆ借らしていぬ 御言葉ゆやりば

アシバチュクユル ティユカラシテイヌ ウクトゥバユヤリバ

(漁師を止(や)めて、足場の人足になれと、御上(おうえ)の命が出され、)

 

海ぬ業すしや 今や我ん一人

ウミヌワザスシヤ ナマヤワンフィチュイ

(仲間は一人、二人と去ってゆきました。)

 

此り迄 海ぬ神々ぬ 御情ゆ受きてぃ 誠此ぬ海に 生ちち来ゃりば

クリマディ ウミヌカミガミヌ ウナサキユウキティ マクトゥクヌウミニ イチチチャリバ

(私が優れた漁師であったのは、海の生き物の恩恵を人一倍に賜わったからです。)

海ぬ業ゆ 捨てぃぬなゆみ

ウミヌワザユ シティヌナユミ

(今は、たったひとつの舟小屋となりました。私は漁師をやめません。)

 

余所ぬ捨てぃるとぅん 我んや此ぬ海とぅ 共にあぬ世迄 行かなでむぬ

ユスヌシティルトゥン ワンヤクヌウミトゥ トゥムニアヌユマディ イカナデムヌ

(ここで海とともに滅びてゆきます。)

 

平知盛(たいらのとももり)カニ:

待て待て漁師、いつ滅びるとひとの言う。この浜いまだ豊かなり。流れ流れし我らを迎え、ここに住みつき千歳(ちとせ)たり。我らは負けに負けを重ね、ついには、海に沈みたり。

(待ちなさい、漁師、誰がいつ滅びると言いましたか、いまだにこの浜は豊かです。流れに流れ着いた私たちをウチナー(沖縄)は迎えてくれて、ここに住み着き千年が経ちました。昔私たちは、いくさで負けに負けを重ねて、ついには海に沈みました。)

 

漁師:

此処に居しや ガニぬ群り

クマニヲゥシヤ ガニヌムリ

(ここにいるのは、カニの群れしかありません。)

 

うぬガニぬ我身に 語てぃ居ゆら

ウヌガニヌワミニ カタティヲゥユラ

(カニが私に語っているのでしょうか?)

 

知盛カニ:

いかにも漁師。怒りの形相をご覧候。尊き漁夫の御志(おんこころざし)、まことに敬って候。我は新中納言(しんちゅうなごん)平知盛(たいらのとももり)なり。

(そうです漁師さん、私の怒りの形相を見てください。あなたの漁夫のお志を敬います。私は、新中納言(しんちゅうなごん)平知盛(たいらのとももり)です。)

 

地謡:

壇ノ浦の戦いに「よき敵(かたき)こそ組むべし」と宣(のたま)ひて、源氏の舟に 乗りうつり、喚(おめ)き叫んで 闘(たたか)へど、判官は 教経(のりつね)と 組まずして、長刀(なぎなた)脇に 挟みては、遠き味方の 舟先にゆらりゆらりと 飛び乗らむ。

(壇ノ浦の戦いに「ふさわしい敵こそ、戦ってみようじゃないか!」と申し、源氏側の舟に乗り移って、喚き叫んで、戦うが、源義経(みなもとのよしつね)は、教経(のりつね)と組もうとせず、長刀を脇に挟んで、遠く離れた味方の舟さきに飛び移ってゆきます。)

 

平教経(たいらののりつね)カニ:

われ、能登守教経(のとのかみ)教経(のりつね)。我の 矢先に回る者はなし。されど今日を 最期(さいご)と定め、厳(いかめ)しき太刀 抜きたれば、左右に振りて、多くの者を討ちにけり。されど いまは 最期と悟り

(私は、能登守教経(のとのかみ)教経(のりつね)です。私の矢先をかわす者はいない。けれども、今日は最期の日と悟りました。威厳のある太刀を抜き、左右に振って、多くの者を討ち取った。しかし、今こそ最期と悟って)

 

地謡:

太刀薙刀(たちなぎなた)を 海に投げ入れ、甲(かぶと)も脱ぎて、鎧(よろい)の草摺(くさずり) なぐり捨て、胴ばかり着て、異形(いぎょう)となりて 手を広げ

(大小の刀を海に投げ入れ、兜(かぶと)も脱いで、鎧(よろい)の留めてある紐も抜き捨てて、上着の鎧だけを着て、世にも怪しい顔つきとなって、手を広げ)

 

教経カニ:

「われと思わん 者どもは、教経(のりつね)に組んでみよー!」

(我と思わん者たちは、教経(のりつね)と戦って組んでみよ!)

 

地謡:

安芸太郎(あきのたろう)と弟次郎 さらに郎等(ろうとう)一人、一斉(いっせい)に 教経(のりつね)飛びかかりしも 教経(のりつね)、郎等(ろうとう)海に 蹴(け)落とし、太郎(たろう)を 左手、弟次郎を 右手の脇に 挟み込み、一締(ひとし)めしめて

(安芸太郎(あきのたろう)と弟次郎 さらに側近の兵士が一人、一斉(いっせい)に教経(のりつね)飛びかかったが、教経は、まず兵士を海に蹴落として、太郎を左手、弟次郎を右手の脇に挟み込んで、ひと締めして)

 

教経カニ:

「いざ下郎ども、されば、おのれら、死出(しで)の山の 供をせよー!」

(いざ、下郎(げろう)ども。このまま、おのれら、死者の山となった世界の供をしろー!)

 

地謡:

生年(しょうねん)二十六(にじゅう ろく)にて海に 消へにけり。

(と言って、生涯を二十六歳で、海に消えて行きました)

 

知盛カニ:

「見るべきほどの ことを見つ、今は自害せん」

(見るべきもの、見るべきことを見ました。今は自害するときです。)

 

地謡:

新中納言(しんちゅうなごん) 平知盛(たいらのとももり)、伊賀家長(いがのいえなが) 呼び召して、鎧(よろい)を二領(にりょう) 着せさせむ。家長(いえなが)も 鎧(よろい)二領(にりょう) 重ね着て、手を取り組みて 海の底へぞ 入にける。

(新中納言(しんちゅうなごん)平知盛は、伊賀家長(いがのいえなが)を呼び召して、鎧を二着、着せさました。家長も鎧を二着重ねて着て、知盛と手を取り組んで、海の底へ入って自害しました。)

 

知盛カニ:

平家の侍(さむらい)、是(これ)を見て われら二十余人も 遅れじと、

(平家の侍は、この光景を見て、私たち二十人あまりも、遅れをとらじと)

 

知盛カニ・教経カニ:

手に手を取り組み、海の底へと 沈みけり。

(手に手を取って組んで、海の底へ沈んで行きました。)

 

地謡:

主(ぬし)もなき むなしき 舟を離れては 潮にひかれて 風にしたがい、ウチナーの海に 着きにけり。我ら平家の 落人(おちうど)なり。

(将軍もいなくなった、虚しい船を離れ、私たちの魂は潮に引かれ、風にしたがって、ウチナー(沖縄)の海に着きました。私たちは平家の落人(おちうど)です。)

 

漁師:

あんどぅややびるい  あぬ世先なたる 平家ぬ武将どぅややびるい

アンドゥヤヤビルイ  アヌユサチナタル ヘイケヌブショウドゥヤヤビルイ

(そうでしたか。あなたたちは、みな滅びた平家の武将なのですね。)

 

あゝ 口惜しや

アア クチューシヤ

(さぞ辛い最期を遂げられたのでしょう。)

 

此ぬ島ぬ海や 肝洗てぃ呉たみ

クヌシマヌウミヤ チムアラティクィタミ

(ウチナーの海は、あなたの魂を癒したでしょうか?)

 

誠名に立ちゅる 大浦浜やしが

マクトゥナニタチュル ウフラバマヤシガ

(大浦の浜辺は美しく、透き通っています。)

 

去じゃる戦居てぃ 海ぬ先迄ん

ンジャルイクサヲゥティ ウミヌサチマディン

(しかしかつて、ウチナーの静かな青い海も、大きな戦(いくさ)で)

 

血に染まてぃ無らん 色変わてぃ無らん

チニスマティネラン イルカワティネラン

(血に染まりました。)

 

またとぅあぬ戦 呼び起くちなゆみ

マタトゥアヌイクサ ユビウクチナユミ

(もう二度と戦いはしたくありません。)

 

やしが 此ぬ浜やまたん 戦場になゆん

ヤシガ クヌハマヤマタン イクサバニナユン

(それなのに、ここを戦場の足場にされる悲しさよ。)

 

ウルぬ住み家ん 哀り消い果てぃてぃ

ウルヌシミカン アワリチイハティティ

(チビリシ(青珊瑚)も死に、)

 

ザンヌイユぬ達ん 姿見らん

ザンヌイユヌチャン シガタミラン

(魚たちは逃げ、ジュゴンにも会えなくなりました。)

 

我々ん 共に行逢らりし 何時迄がやゆら

ワリワリン トゥムニイチャラリシ イチマディガヤユラ

(カニさん、あなた方とお目にかかれるのもいつまでのことでしょう。)

 

知盛カニ:

気を強く 持たれよ漁師(りょうし)。

(気をしっかり持ちなさい、漁師!)

 

教経カニ:

我らの仲間は、安芸(あき)の海に たとえ原爆 落ちようとも、ふたたび砂から 潮吹き返せる 強者(つわもの)なり。我らは共に、海に生きるものなり。

(私たちの仲間は、安芸(あき、広島)の海に、たとえ原爆が落ちても、再び砂から、潮を吹き返せる強者(つわもの)です。私たちは、ともに海に生きるものではありませんか。)

 

平家長(たいらのいえなが)カニ:

家長(いえなが)ただいま、南の海より戻り参上。南の海にザンはうつり住み。「水底の杭を打っては、砂は舞ひ、地を叩く音、海中(うみじゅう)にとどろきぬ。われ、恐れをなして、大浦の海を逃れしも、漁師の櫂(かい)挿(さ)す音、忘れることはなし。漁師に再び会いし日を固く信ずるなり。虹の起(た)つところ、我、君を待ちにけり。」

(家長(いえなが)、ただいま、南の海より戻って参りました。南の海にジュゴンは移り住んでいます。ジュゴンは「水底の杭を打っては、砂が舞いました。海の底を叩く音が海中に響きわたりました。私は、恐れをなして、大浦の海を逃げましたが、漁師の櫂を海面に挿して漕ぐ音を忘れたことはありません。漁師にもう一度会える日が来るのを固く信じています。私は虹を立てて、あなたを待っています。」)

 

漁師:

ザンヌイユぬ達や 生ちち居ゆみ

ザンヌイユヌチャヤ イチチヲゥユミ

(ジュゴンは生きていたのですか。)

 

やりば行逢い欲さ 網ぬ手ゆ止みてぃ

ヤリバイチャイブサ アミヌティユトゥミティ

(今こそ、網を投げる手を休め、)

 

肝勇み勇でぃ 急じ漕じ渡ら

チムイサミイサディ イスジクジワタラ

(再会への旅を心に浮かべ、私は櫂を握ります。)

 

見守やいたぼり 海ぬ神々ゆ

ミマムヤイタボリ ウミヌカミガミユ

(海の神よ、私をお守りください。)

 

知盛カニ:

いざ!南へ!さらなる南の海を 眺むれば。

(さあ南へ!そのさらなる南の海を眺めると)

教経カニ:

その行く末に、君に掛けんと、

(その行く先に、漁師に向けて掛けようとした)

 

知盛・教経・家長カニ

ザンの起(た)てし虹(ヌジ)の見ゆらん。

(ジュゴンの立てた虹が見えます。)

 

〈カニの歌〉

 

知盛カニ

Taringa Whakarng(聞き逃すな!)

Kia rite (準備はいいか!)

Kia mau! (体勢解除!)

 

知盛・教経・家長 カニ:

Hu!Ringa ringa pakia (手で腿を打て!)

Waewae takahia kiakino neihoki (全力で強く足を打て!)

Hu kia kino ne hoki(激しく打て!)

a (ka)mate kamate kaora(私は死ぬのか?私は死ぬだろう!私は生きるのか?私は生きるだろう!)

kamate (ka)mate kaora(私は死ぬのか?私は死ぬだろう!私は生きるのか?私は生きるだろう!)

teneite tangata pu huru (これは毛むくじゃらの男)

nana nei tiki (mai) (誰が太陽を運んで来るのか?)

whakawhiti te (日差しを浴びるために)

a upa a upa (上を向いて踏み出せ!)

a upane(さらに一歩踏み出せ!)

white tera (そして太陽は輝く!)

 

〈アイ狂言〉

「人魚の歌声?音の使ったジュゴンの生態研究」

市川光太郎(京都大学フィールド科学教育センター)

 

〈後幕〉

猩々(しょうじょう、安徳天皇の今の姿):

我は千歳(ちとせ)の昔、祖母に抱かれて、海に身を沈めし者。戦(いくさ)の波間に浮かぶ舟にゆられ、山鳩色(やまばといろ)の衣 左右に鬢(びん)づらを結い、波の下の都へと向かいたり。水底の魚(うお)となりて、千尋(ちひろ)の海に漂(ただよ)えば、南の国に龍宮城を見つけたり。龍宮の王は、不老の門をくぐらせて、長生の殿に迎え入る。深き御慈悲(ごじひ)は、我が子のごとく、この庭に遊ばせ給ふ。

(私は千年前の昔、おばあさまに抱かれて、海に身を沈めた者です。壇ノ浦の戦いで波間に浮かぶ舟に揺られ、皇族のみが着る鈍い黄緑色の衣を着て、髪の毛を左右に分けてくくってまとめ、波の下にあるとおばあさまに言われた都へと向かいました。私は海の魚となり、広い海に漂っていましたが、南の国に龍宮城を見つけました。龍宮の王様は、寿命の尽きない門をくぐらせてくれて、末長く続く宮殿に迎え入れてくれました。王様の深いご慈悲は、我が子のようで、私は王様の庭で遊ばせてもらっていました。)

 

海澄んで 藻場の豊かに たなびきし 龍宮の庭 新たな年に 友と遊ばん

(海の色は澄み、藻場(海の芝生)は豊かにたなびいています。龍宮城の庭にも新たな年がめぐり、またお友達と遊びましょう。)

 

今年(こんねん)も、わが親友を 不老の門にて 待ちにけり。

(今年も、私の親友を寿命の尽きない「不老門」で待っています)

 

ジュゴンの母:

海や青々と 色深さあてど

ウミヤ  アウアウトゥ  イルフカサ  アティドゥ

(青き海、わたしたちを映しては、人々は丘から、わたしたちを眺めていました。藻場も豊かな青い海。)

 

眺めよる人の 肝洗て居たる

ナガミユル  フィトゥヌ  チムアラティ  ヲゥタル

(眺める人の心を洗ってくれます。)

 

やしが 今やうち変わて 元姿無らん

ヤシガ ナマヤ  ウチカワティ ムトゥスィガタ  ネラン

(しかし今、海も砂に濁ってしまいました。)

 

海や砂かんてぃ 黒々とぅなやい

ウミヤ  スィナカンティ  クルグルトゥ  ナヤイ

(海の底の砂が舞って、海の色は真っ黒になりました。)

 

龍宮の匂いや 琉球やあらん

リュウグウヌ  ニウィヤ  リュウチュウヤ  アラン

(龍宮城に琉球の調べももう聞こえません。)

 

此の我身や誠 ザンどやよる

クヌワミヤ  マクトゥ  ザンドゥ ヤユル

(わたしは人魚とも海馬とも呼ばれるジュゴンです。)

 

猩々:

よく参られよ、龍宮城へ。子息はいずこに?

(龍宮城へ、よくいらっしゃいました。息子さんはどこにいますか?)

 

ジュゴンの母:

かなし思み産し子や 沖縄にや来らん

カナシ  ウミナシグァヤ  ウチナーニヤ クラン

(息子はもうウチナーには参りません。)

 

猩々:

何かある?

(どうかしたのですか?)

 

ジュゴンの母:

人や戦場の 足場作ゆんでぃ

ファトゥヤ  イクサバヌ  アシバ   チュクユンディ

(戦(いくさ)の足場の護岸工事が作られて)

 

耳よ失てぃ うりだきやあらん

ミミユ  ウシナティ  ウリダキヤ  アラン

(耳をつぶされ、)

 

黒砂の為に 目くらなてぃ無らん

クルスィナヌ  タミニ  ミクラナティ  ネラン 

(海には土砂が流されて、目をつぶされてしまいました。)

 

猩々:

友は、いかがある?

(僕のお友達は、どんな具合ですか?)

 

ジュゴンの母:

南方の果てぃの さし草と共に

フェーカタヌ  ハティヌ  サシグサトゥ  トゥムニ

(はるかかなたの南の果ての藻場(海の芝生)で、)

心落てぃ着かち 暮らち居よん

ククル  ウティチカチ  クラチ  ヲゥユン

(静かに身体(からだ)を休めています。)

 

猩々:

良き具合に向かわれしか?

(具合は良くなってきていますか?)

 

ジュゴンの母:

耳無らんあれば 先方の定まらん

ミミネラン  アリバ  サチホーヌ  サダマラン

(海に生きる者が、耳をつぶされては、方向を失って死を待つばかりです。)

 

暗闇の海や 地獄でもの

クラヤミヌ  ウミヤ  ジグク  デムヌ

(暗闇にいるわが息子は、生きて海の地獄にいるのです。)

 

やても我が産し子 肝からの頼み

ヤティン  ワガナシグァ  チムカラヌ  タヌミ

うんじゅに歌よ 渡ち呉ぃりんちょてぃ

ウンジュニ  ウタユ  ワタチ  クィリンチョティ

願げ事のあれば 我身や来ちゃる

ニゲグトゥヌ  アリバ  ワミヤ  チチャル

(それでも息子はあなたに歌を伝えてほしいと言ったので、仲間にわが子を頼み、ここにわたしが来たのです。)

 

猩々:

たったひとりの親友の、辛き苦しみ、わが心 暗闇(くらやみ)に沈むがごとし。もう二度と会えぬと申し候か。

(たった一人の親友が、辛い苦しみの中にいるとは、僕の心は暗闇に沈んでいってしまいそうです。もう二度と会えないと、おっしゃるのですか?)

 

ジュゴンの母:

あんどぅややびいる

アンドゥ  ヤヤビール

(会えません。)

 

〈猩々の悲しみの舞〉

 

ジュゴンの母:

やしが 互に真心や 一つさらめ

ヤシガ  タゲニマグクルヤ  フィトゥツィ  サラミ

(でもわたしたちの心は、必ず繋がることでしょう。

 

波に打ち招く さし草の定め

ナミニ  ウチマニク  サシグサヌ  サダミ

隠れやい行きゅさ 海の色ん

カクリヤイ  イチュサ  ウミヌイルン

(波に揺られし 藻草の中を かくれんぼする 美らの海)

 

〈ジュゴンの母の歌舞〉

 

珊瑚に隠れよる イヌビ(クマミノ)んかい

ウルニカクリユル イヌビンカイ

此処んかい居んでゆ 告げらりて

クマンカイヲゥンディユ チギラリティ

(珊瑚(さんご)に 隠れしクマミノに ここにいるよと 告げられて)

 

生虫の 笑い声 懐かさの貴方の声

イチムシヌ ワライグィ ナチカサヌウンジュヌクイ

(生きものたちの笑い声 なつかしき きみの声)

 

手を取やり 身を合わち

ティヲゥトゥヤイ ミヲゥアワチ

抱かれてまたや

イダカリティマタヤ

(手をつなぎ 肩擦り寄せて 優しき抱擁 さようなら)

 

潮の流れに 魚と遊び

ウシュヌナガリニ イユトゥアシビ

何時も何時までも 手よ振り合わち

イチムイチマディン ティユフイアワチ

(渦巻く 潮に魚と遊び いつまでも手を振り合って)

 

また何時か 珊瑚ぬ 御庭居て 遊ばなや

マタイチカ ウルヌ ウナーヲゥティ アシバナヤ

シュラージャンナヨ その時まで

シュラージャンナヨー スヌトゥチマディ

また明日や

マタアチャヤ

(またいつか 珊瑚(さんご)の庭で また遊ぼう そのときまで)

 

地謡:

真南の海に戻る  ザンの母親よ

マフェヌ  ウミムドゥル  ザンヌ ファファウヤユ

(猩々は、南の海へと帰るジュゴンの母を見送りました。)

 

目のしやい肝しやい  送る苦しや

ミヌシャイ チムシャイ  ウクル クリシャ

思産子元に  我が友の元に

ウミナシグァ  ムトゥニ  ワガドゥシヌ  ムトゥニ

(息子のもとに、傷ついた息子の友のもとに。)

 

肝寄せる時や  虹橋掛けて

チムユシル  トゥチヤ  ヌージバシ  カキティ

(共に心を寄せるとき、南に虹をかけにけます。)

 

また拝む節よ  胸内に抱ちよて

マタヲゥガム  シチユ  ンニウチニ  ダチョティ

弥勒世のしるし  虹渡さ

ミルクユヌ  シルシ  ヌージワタサ

(いつかまた、再会のときを胸に抱き。猩々(安徳)は虹を友に届けました。)

 

ジュゴンの母

 

Haʻaheo ka ua i nā pali

雨が誇らしげに尾根を横切り

Ke nihi aʻela i ka nahele

森の中を通り抜けていく

E hahai (uhai) ana paha i ka liko

未だ開かぬ蕾を探しているかのように

ua ʻāhihi lehua o uka

山あいに咲くレフアの花よ

Aloha ʻoe, aloha ʻoe

あなたにアロハあなたにアロハ

E ke onaona noho i ka lipo

木の陰に佇む心優しき人

One fond embrace, a hoʻi aʻe au

去っていく前に、もう一度あなたを抱きしめよう

Until we meet again

また会えるその時まで

O ka haliʻa aloha i hiki mai

懐かしく暖かい思い出が胸をよぎる

Ke hone ae nei i ku ʻu manawa

ついこの間のことのように

O oe no kau ipo aloha

私の最愛の人、あなたは私の美、芸術です。

A loko e hana nei

真心は決して引き裂くことはできない

Maopopo kuʻu ʻike i ka nani

私はあなたの素晴らしさをよく知っている

Nā pua rose o Maunawili

マウナヴィリに静かに咲くバラの花

I laila hiaʻia nā manu

そこにいる啼かない鳥たち

Mikiʻala i ka nani o ka lipo

そして木の陰にいる美しい人

Aloha ʻoe, aloha ʻoe

あなたにアロハあなたにアロハ

E ke onaona noho i ka lipo

木の陰に佇む心優しき人

One fond embrace, a hoʻi aʻe au

去っていく前に、もう一度あなたを抱きしめよう

Until we meet again

また会えるその時まで

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